水中ドローンと養殖漁業

水中ドローンの漁業における活用方法の1つとして、養殖漁業がある。
養殖漁業での主な活用方法は、以下が挙げられる。

  • 養殖生簀の設備点検
  • 弊死魚の確認

これらでの活用方法を詳しく解説していきたいと思う。
なお、今回は海上でおこなわれる養殖漁業における水中ドローンの活用方法となる。

目 次
1ー養殖漁業について
2ー養殖生簀について
3ー養殖生簀の設備点検
4ー弊死魚の確認
5ーまとめ
1ー養殖漁業について

養殖漁業は、海上に養殖生簀という四角、または円形の袋状の網の中で稚魚を長期間のあいだ育て大きくし、出荷する漁業のことをいう。

日本では、さまざまな魚が養殖漁業により出荷されているが、ブリ・ハマチ・鯛・フグなどさまざまな魚が養殖され、漁業総生産量のうちの3割弱が養殖業が占め、安定した生産量で日本の漁業を支える漁業方法だ。

魚の特徴として、海水の温度が下がると餌を食べる量が減り、成長が遅くなるため、海水温の暖かい四国や九州が養殖漁業が盛んな地域である。
僕は、九州の養殖ブランド魚の生産が盛んなことが、とても嬉しい。

丸型養殖生簀

四角形養殖生簀

2ー養殖生簀について

養殖生簀は、養殖魚によって生簀の形状は異なるが、基本的な構造は変わらない。

代表的な養殖であるブリ・ハマチの養殖は、四角の形をしており、水深約10mの袋状の網が設置される。

これらの養殖生簀は、生簀の四方八方から海底向かってロープが延びており、そのロープが海底に打ちこまれた杭のようなものと連結されることにより、海上に固定されている。

3ー養殖生簀の設備点検

さて、本題の水中ドローンにおける養殖生簀の設備点検について。
養殖生簀の設備点検で主の使用用途は、生簀の網の点検である。

生簀の網が破れてしまうようなことがあれば、生簀の中の魚が逃げてしまい、養殖業者は大損害を被ることになる。

長期間丹精込めて、育てた魚が出荷前にいなくなっていたらどんなに悲しいことか。想像もしたくない・・・泣。

生簀が破れてしまうのは頻繁に起こることではないが、台風や豪雨の時期にあっては、大きな流木などの漂流物が生簀に引っ掛かり、生簀が破れることが頻発してしまう。

大分県の地元漁師によると、特にここ数年は豪雨や台風により、流木が非常に増えているそうだ。

このように養殖生簀が大なり小なりの大きさで破れてしまった場合、漁師が即座に気づくことはむずかしい。

養殖業者は、毎日給餌をおこなうため、そのときに魚や餌の減り具合で生簀から魚が流出してしまったことに気づくのである。

このようなケースにおいて、養殖業者が水中ドローンを持っていた場合、豪雨のあと即座に水中ドローンにより所有する生簀のまわりを確認することができる。

もし破れていたとしても、早急に対応することが可能なため、大量の魚の流出は避けられるだろう。

加えて、被害の有無を確認できることは、何より安心感を得られるだろう。

この確認を台風や豪雨が起きるたびに潜水業者に依頼をすると、コストがかかりすぎてしまうため、一定期間放置し、生簀が破れていることに気づいてから、潜水士に網の修理をお願いする形となる。
あとの祭りだ。

その他の養殖生簀の設備点検の活用方法として、先ほど2にて述べた海底に打ちこまれた杭の腐食状況等の定期的な点検である。
この杭が腐食劣化により外れてしまった場合、どのようなことが起こるのかは説明するまでもないだろう。

この杭については、設置された海底の場所により水深は変わってくるだろうが、僕が先日大分県内の養殖場を点検した際は、水深約30mであった。

この点検は、水中ドローンを水中に入れてから、5分もかからずに確認することができた。

水深30mであれば潜水士に頼めば潜れるだろうが、もっと深くなれば潜水士といえど、いろいろな制限がかかってくるし、身体的にもきつい作業となるだろう。

養殖生簀水中映像

海底に打ちこまれた杭

4ー弊死魚の確認

弊死魚とは、死んだ魚のことをいう。

養殖業者は、日々、魚が死んでしまわないようにたゆまぬ努力をしているわけだが、定期的に養殖生簀の中を確認するわけではない。

そのため、どれくらい幣死魚がいるかは出荷してみないと分からない。

養殖生簀の構造としては、弊死魚になってしまえば、養殖生簀の真ん中の底に集まる仕組みとなっている。
そのため、その部分を確認すれば、どれくらい弊死魚がいるのか確認することができる。

しかし、それを確認したことのある漁師はいないそうだ(地元漁師情報)。

実際に養殖生簀の点検動画を漁師の方に見せたときは、

生簀の中ってこんな感じなんや

もっと魚死んでると思ってたけど、全然おらんやん

などと嬉しそうだった。

生簀の設置角度などによる魚の生育状況を試験的にしていた時期だったらしく、そのような確認としても、ものすごく有益となったようだった。

30年選手の養殖漁師の方でも、自分の生簀の中を見て初めて見たと驚くのだから、これまでよりいかに水中の映像を見ることが簡単になったかご理解いただけるであろう。

5ーまとめ

養殖漁業における水中ドローンの活用は、上記のように有効活用すること漁業の一助になることは間違いないだろう。

今回紹介した活用方法の他にも、これから普及が進めばさらに活用方法は拡がっていくだろう。

今回は養殖漁業に的を絞って書いたが、水中ドローンは他の漁業方法にも有効活用することができるため、次回以降に紹介していきたいと思う。